くり~み~あじ~る

Notes Toward a Supreme Fiction

往復書簡 2024/2/21

藤井さんへ 「胎界主」を第一部まで読み終えたのですが、なかなか難物ですね……。よく、「生体金庫」まで読んでと聞くので、とりあえず第二部を読み終えれば消化しやすくなるのかもしれませんが、ちょっと自分にはキャパオーバーかもしれません。正直、「胎界…

往復書簡 2024/2/18

鷲羽さんへ まずは伊勢田勝行監督の映像をご視聴して貰ってありがとうございます。「むき出しの他者の生の片鱗に触れたような感覚」というのは、かなりわかります。自分が監督の映像で生じる「畏れ」は、自分の「アニメを見ていた記憶」をかき乱すから生じる…

往復書簡 2024/2/17

藤井さんへ 目[mé]の展示についてのnoteを読みましたが、たいへん興味深かったです。このように、枠組みがぐらぐらする体験に(読んだだけですが)、素朴に感動してしまいます。思うに、自分が「他者」と呼ぶのは、単にぐらぐらさせてくれるもの、という程…

往復書簡 2024/2/15

藤井さんへ 「故郷喪失」が政治とアイデンティティの問題である、というのはその通りだと思います。というより、全ては、政治=社会とアイデンティティ=私の問題に還元できてしまうのかもしれません。だからこそ、そうではないもの=他者(?)を故郷喪失に見…

往復書簡 2024/2/14

https://yo-fujii.parallel.jp/2024/02/13/post-1968/ 藤井さんへ お返事ありがとうございます。お返事を頂いて、第一に決定的な思い違いをしていることに気がつきました。故郷の喪失を自認する、という点です。藤井さんが募集要項等で故郷喪失者であること…

往復書簡 2024/2/13

藤井さんへ 儀礼的な挨拶に見えるかもしれませんが、鳩アンソロジーではお世話になりました。故郷喪失アンソロジーも企画されているとのことで、バイタリティに頭が下がります。 故郷喪失について考えていたのですが、ディアスポラや災害避難、難民などに目…

往復書簡 2024/2/12

鷲羽さんへ 保坂和志と小島信夫のやり取りの「小説修業」を読んだり、巨大建造さんとのやり取りを見て、手紙が面白いかもしれない、とミーハー的に思っていました。実際に行動にまで移せたのは、タイミングと言えばそれまでですが、伊勢田勝行監督(今は伊津…

Diary 『テクストの楽しみ』ロラン・バルト/『鏡の中は日曜日』殊能将之

バルトはテクストを二種に分類する。 楽しみのテクスト―満足させ、満たし、幸福感を与えるもの。文明からやって来て、文明と決裂することなく、読書の心地よい実践とむすばれるもの。 歓びのテクスト―放心の状態におくもの、意気阻喪させるよの。読者の、歴…

Diary 『テクストの楽しみ』ロラン・バルト/『鏡の中は日曜日』殊能将之

バルトはテクストを二種に分類する。 楽しみのテクスト―満足させ、満たし、幸福感を与えるもの。文明からやって来て、文明と決裂することなく、読書の心地よい実践とむすばれるもの。 歓びのテクスト―放心の状態におくもの、意気阻喪させるよの。読者の、歴…

Diary 『隠喩としての建築』柄谷行人

柄谷行人はゲーデルのメタファーを用いて自己言及について考える。隠喩としての建築とは、混沌とした過剰な生成に対してもはや一切自然に負うことのない秩序や構造を確立することとして提示される。 F・M・コンフォードはギリシャ思想の世界の見方を制作とし…

Diary 『マンガと映画 』三輪健太郎

本書は映画とマンガという「近代」的な芸術を比較することでマンガの理論化を試みる。これは映画とマンガが近代の「視覚」に依拠しているからだ。つまり、それは映画とマンガを同じように読み解きうる「視覚」を近代人である自分たちが持っていることを意味…

Diary 『探偵が推理を殺す: 多元化する社会と本格ミステリ』小田 牧央/『法月綸太郎ミステリー塾 海外編 複雑な殺人芸術』法月綸太郎

本格定義論争、特にX論争について思ったのは「どうでもいい」だった。前提として謎の難易度についてはかなり興味がない。元々推理小説を読んで推理などしたことないし(必然的に推理してしまって真相に至ったということはあっても)、故に少なくとも自分にと…

Diary 『不完全性定理とはなにか』竹内薫

ミステリについて考えようと思ったので不完全性定理の概要は再確認したいと思って手に取ったけどなかなかわかりやすかったと思う。小説や伝記風の記述もあって飲み込みやすい。 第一に紹介されたカントールにおいて、順序数と濃度の概念を導入する。順序数は…

Diary 『八月の光』フォークナー/『+チック姉さん』(22)栗井茶

フォークナーをこの一週間くらいちまちまと読んでいたのは、『八月の光』がつまらなくて読み進められなかったからではない。むしろ文体にはとても惹かれていて「小説」を読む面白さとはこういうことだと思ったくらいだった。では、なぜ読む速度が遅かったの…

Diary 『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』(1〜4)足立たかふみ・サイバーコネクトツー/『宇宙プロジェクト開発史アーカイブ』鈴木喜生/『月の真実と宇宙人の存在』39直人/『月の縦孔・地下空洞とは何か 月探査機「かぐや」による縦孔発見から「UZUME」計画まで』春山純一

今日集中的に宇宙の本を読んだのは陰謀論にハマったからではなく、前から書こうと思っていた東方の二次創作、特に紺珠伝をモチーフに何か書こうと思ったからだ。幻想を侵略する不可視のキュリオシティとアポロ捏造説は魅力的なイメージに感じた。というわけ…

Diary 『読書について』ショーペンハウアー

そもそも読書日記を付けようと思ったきっかけを考えるにあたって、『読書について』はちょうどよかった。というのも自分が何も考えていないのを実感していたから。 読書とは他人の頭で考えることだみたいなアフォリズムは聞き覚えがあっても、実際に自分自身…

ながるるるるるこメモ 漂泊するアイデンティティ

1.宇宙人たち るるるこは最初、サールスの召使として登場する。サールスの召使をしていたるるるこはサールス文化に染まっている部分が多い。例えば「一人前の召使になってネズミを食べる」ことを目標にする。るるるこが王になった際には「しゃー♡香り高き…

少女☆歌劇 レヴュースタァライト 再生産するバナナイスマニエリスムからワイ(ル)ドスクリーンバロックへ

人間とは地と天との間に存在する不滅なるもの。地上の諸存在の間にあってただ一つ、勢い熾んな炎のごとくに自らを超えて飛躍し、その活動をもって大地を支配し、諸元素に挑戦し、魔術を認識し、スピリトと交わり、万物を変形し、神の像を彫り上げる。固定さ…

聖林檎楽園学園総解説

聖林檎楽園学園は竹本泉の作品に登場する学校。巨大で変な出来事がよく起きる。 解説と言っても竹本泉作品を説明するのはまあ、野暮なのでゆるめな感じで。 ・江崎まりあんシリーズ 『アップルパラダイス』 聖林檎楽園学園の初出。江崎まりあん、西園寺京子…

虹ノ咲だいあの破綻と閉塞

結論から言って、キラッとプリ☆チャンは、虹ノ咲だいあの物語であったと断言しても過言ではない。特に二期では、服飾や歌唱の才能を持ちながら極度に内気な少女、虹ノ咲だいあとバーチャルプリチャンアイドルだいあの正体と変化が主軸となっていた。しかし、…

テキストからの離脱 ラヴクラフト「ダゴン」

ラヴクラフトのダゴンを久しぶりに読んだのでちょっと雑感。 ダゴンはかなりダイレクトに、「ラヴクラフト」的な小説だ。 つまり、①理性に基づく科学的明晰性が、②悪夢と幻覚に敗北する物語である。 物語はとある男の体験したことを綴った手記の体裁で始まる…